清純な香りが

「あいつら、いったい何しに来たんだ?」
「道明寺が呼びつけたんでしょう?」
屈託のない笑みを漏らした明るい表情はそのあと真顔になってため息を一つ付いた。
「どうして、今日が記念日になるのかな 鑽石能量水 騙局・・・」
ソファーの肘かけにもたれるその姿は身体でわずかな不満を表現してる。
「お前、俺に惚れらえてうれしくねぇのかよ」
「惚れられたきっかけが殴られたことって言われて喜ぶ女性がいると思ってるの!」
すげー不機嫌なこいつの声に俺も不愉快。
「会った瞬間に時間が止まったとか、目が離せないとか言語治療、ひとめぼれ的なこと言われたらうれしいけどさ・・・」
見た目もそこそこのチンクシャなお前になぜか興味を持ったのは覚えてる。
それがいつだったかさすがの俺も思いだせないんだよ。
「だったら、お前はいつから俺に惚れたんだ?」
ソファーに座るあいつの横に即座に腰を落とした。
「いつから・・・・?」
首を傾げて牧野が黙りこんだ。
そこそんなに深く考えるところか!
餌を待ってお座りさせてる犬 布吉自由行の気分で牧野の顔をじっと見つめる俺。
牧野が覗き込むように俺をじっと見つめる。
純な輝きを持つきらきらとした瞳。
俺に媚びない反抗的な強さを持った女はお前が初めて。
穏やかに俺を見つめて、俺のイラつきを自然と溶かす温もり。
熱くなる瞳の奥が潤んでくる瞬間がたまらなく愛しい。
「高校の時、私を守って殴られっぱなしで手を出さずに守ってくれたことあったよね」
桜子の仲間に囚われたこいつを助けにいったのはもう随分前のような気がする。
「あの後さ・・・」
道明寺が言ったこと覚えてる?」
腕の骨を折って体中が殴られたあとで痛かった痛かったことしか覚えていねぇよ。
それとお前を守れたことと俺に抱き付くお前のくしゃくしゃな泣き顔。
「あんなに殴られたのは初めてだった。
人は殴られたときこんなにいたいものなのかと私のおかげで勉強になった。
みたいなこと言ったの覚えてる?」
下から覗き込んでいたずらに笑みを浮かべる牧野。
お前のその上目使いには弱いんだよ。
照れ臭くて視線を反らしたくなる。
やめると言いたい感情はごくりと喉を鳴らす。
「道明寺の殴られた記念日が私の惚れた記念日かもね」
「俺の惚れた記念日と対して変わらねぇだろう」
コツンと触れた額。
頬を包みこむ指先。
その手のひらに牧野が自分の手のひらを添えてくる。
鼻先が触れて目の前で牧野が睫毛が微弱に動く。
睫毛に、瞼に軽く落とすキス。
肌に触れた感触のままに唇を重ねた。
「さすがに道明寺のように日にちまで覚えてないけど」
離れがたい想いを残したまま牧野から離れた唇。
クスリとほほ笑む口元はキスの余韻を残したまま赤く色づく。
つややかなぷっくりとした唇をずっと味わいたい欲望に火をともす。
「牧野・・・」
「ん?」
「今日はまたお前に惚れた気がする」
「・・・バカッ」
焦った声は好きにしか聞こえねぇ。
火照った顔をごまかすように牧野が俺の首に腕を巻き付けて寄せた華奢な身体。
身体の熱はそのまま俺の身体に伝わってくる。
大事なものをいたわるような感覚で撫でる牧野の黒髪。
すくように滑り落ちる指先が弾く嗅ぎ慣れたシャンプーの清純な香りが鼻先をくすぐる。
二人の熱も・・・
鼓動も・・・
重なる距離。
さっきの続きを再開しようか。
もう、誰にも邪魔させねぇから。